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            メール・マガジン

       「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第017号         ’99−10−15★

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      ココロなき人々

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   ★東海村JCO転換試験棟で起きた、というより「起こした」、臨界被曝

    事故のお粗末。新聞でもTVでも盛大に取り上げられたので、いまさら

    私ごときが言及するまでも無いことだろう、とは先刻承知です。

 

    しかし、この大事件に全く言及しなかったら、「問題解決」の表題には

    そぐわしくないことになるでしょう。多少とも技法に絡め、私の感想を

    <個人的メモ>として記録に留めておく。 ま、今回はそんな姿勢です。

 

 

 

●関東大震災に関わるエピソード

で、こんなのが記憶にあります。ご存じの方も少なくないでしょうが、、

 

あまりの大揺れに誰もが腰を抜かしている時、ひとりだけ泰然たる人がいたそう

です。それが何と、最近着任したドイツ人の神父さん。思わず、「驚いていらっ

しゃらないようですが、ドイツは地震が多いのですか?」と訊くと、「いいえ」。

当然、「じゃ、どうして?」。「出発前、先輩に言われたのです。日本という国

は地震が多いから、十分覚悟して行け、とね。」

 

 

どんなに慣れていても心構えが無ければウロタエる。初めてでも、覚悟があれば、

ウロタエずに済む。ウロタエればさらにまずいことにもなり得るが、ウロタエず

に対処すれば、二次的被害はかなり確実に避けられる。

 

管理職として望ましいのは、どちらでしょう?   言うまでもありませんね。

 

 

地震は天災、誰にも予防は出来ません。人災にも不可抗力的部分はあり得ますが、

多くの部分は予防可能。 二次的災害にも、かなり予防できる部分があります。

 

管理職の仕事、マネジメントという管理は、本質的に「異常への対応」だと申し

ました。 その職責上、管理職自身は決してパニックに陥ってはならないのです。

 

で、どうするか? リスク対策を万全にすることです。 知識や経験を総動員し、

あらゆる角度に想像力を巡らせ、予防できるものには予防対策を講じ、予防でき

ないものには緊急時対策を、、と。

 

つまり、ただ不安におののくという形で「心配」をするのではなく、その2種類

の対策で迎え撃つように「心を配る」べきなのです。  あなたは、どうかな?

 

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●実はそれ、必ずしも災害対策

 

と限ったことではないのです。達成が難しい仕事に取り組み、何とか成功を、と

願う場合にも、同様の「心配り」が役立ちます。何故なら、「万が一にもあって

はならない」ということが、何故か、あって欲しくない時には訪れるのですから。

 

今のことで手一杯なのに、、で、その「心配り」を怠れば、「訪れ」はますます

確実になります。もっと忙しくなること、請け合いです。 そうなりたくない、

となれば、先に少しの時間を割いて、リスク対策に知恵を絞るべきでしょう。 

 

 

大いなる工夫が必要、なのに時間は無い。そこで、効率的に頭を使うことが必要

になります。 その工夫の方法を、ケプナー・トレゴー(KT)法では「潜在的

問題分析」、EM法は「リスク分析」として提供しております。

 

東海村JCOのような核施設の運営は、第一にヘマが許されず、第二に「万一」

はあり得るので、あらかじめ万全の工夫を凝らし、必要な措置を徹底的に実施し、

かつ「不断の補強」を図っていなくてはいけなかった、、、のにダメだった。

 

*   *

 

実のところ、KT法の顧客についてはほとんど知りませんが、EM法は(JCO

ではありませんが)原発関連企業で採用されておりました。その研修を担当した

のは残念ながら私ではなく、従ってこれは伝聞情報でしかありませんが、大変に

高度な頭脳の受講者が多かったそうです。前記「リスク分析」を、こんなプリミ

ティブなもので、、? と、笑って下さった方もあったとか。(この期に及んで

なお笑っていらっしゃるかどうか、ぜひ知りたいものですが、、、。)

 

しかし当然かも知れない、と思いました。何しろ放射能という目に見えないもの

を扱う、危険と背中合わせの仕事ですし、科学の粋を集めた国家的事業、そこら

辺の半端な商売ではありません。その業界には、独自の方法が共有されているに

違いない、、とは勝手ながら。  素人には窺い知れない高度技術分野ですもの。

 

*   *   *

 

それがまあ、蓋を開けてみりゃ、どうでしょ? せっかく装置があるのに、その

意義や性能を無視した「バケツ作業」! それが常態化されており、「裏手順書」

まで作っていたという二重帳簿的違法性。しかも念の入ったことに、それをすら

無視・簡略化したという乱暴さ。  ただ、仕事を早く終わらせたい、だけで? 

 

第14号「エライ人」の大銀行役員室と同様、「何かあるはず」の期待でそこへ

足を踏み入れてみたら「ナーンニモ無い!」。  そんなもんでしょうか、ね?

 

実は金融系や商社系の顧客企業においても、「我々には独自のリスク対処方法が

ある、こんな素朴な技法で済む世界ではない」なんて聞かされたものでしたが、

それにしては当今、具合の良くない話ばかり報道されていますな。悲しいけれど

そこら中「何も無い」、何もまともにはしない日本、になってしまったらしい。

 

*   *   *   *

 

そのような風土では、技法なるもの、まことに無力です。受講して頂いたとして

も、まず使っては下さらない。たとえお使いになるかのごとくでも、単に形式を

整えるツール、とされるだけのことが多い。 結局は、お役には立ち得ません。

 

「技法」は何によらず、いわば「まともなやり方を体系づけたもの」ですから、

逆に言うと、まともさが排除され、常識が無視される環境では、用いられること

もなかろう、効能を発揮することもあり得ない、のです。即ち、技法に力あらし

めるのは、当事者の「心」なのです。

 

今回の事故、報道の断片をいくら拾い集めても、そのココロが見あたらない。     

 

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●「放射能漏れ事故は絶対に

 

起こらない」という前提だから、起きた場合のマニュアルは無かった、、、と

新聞で読みました。何と大胆不敵、いや不用心。人間が「絶対」なんて言える

わけが無い。それを敢えて言うとは、神を恐れぬ傲岸不遜、、、あ、それだ!

 

「神を恐れぬ」ではなく、「恐れ畏まる対象」としての「神」を心の中に持た

ない人々のなせる業、、ですな。 だから天罰が下ったのだ、なんて言ったら

笑われるだろうけれど、人間としては明らかに謙虚さが足りなすぎました。

 

 

謙虚でありさえすれば良いのか、神はいらないか? やはり、あった方が良いに

決まっています。神が無くても「恐れ畏まる」ことはあるでしょうが、その場合、

相手は? 人間でしょうね、当然。 上司とか、顧客とか、、。 それがまずい。

 

普通なら生真面目に良い仕事をしたいと願うであろう現場人が、何故そんな無茶

をして臨界事故を起こしたか?「人間」に良く評価されたい、と願ったからでは

あるまいか。ところがあいにく、その人間、「恐るべき手抜き」をマニュアル化

するような、心の良くない連中であったのだから万事休す。

 

良くない連中、とまでは思わなかったとしても、良くない指示であることくらい

分かったのではあるまいか? いくらかでも感じたのなら、そんな指示を下すの

が良い人間であるはずもなく、それに従う自分の姿に良心が痛んだのではないか。

 

もし神(ではなくとも、絶対的存在)を意識していたら、その「人間」に従う気

にはなれなかったでしょうな。 むしろ拒む、たしなめる、改めさせる、訴える、

告発する、、、バカでもなければ、方法は色々思いつき得たはず、何かしたはず。

 

人間同士の関係は相対的なもの。ということは、善し悪しの判断規準もまた絶対

的ではあり得ず、ある日だれかが、「これでもいいんじゃないかな、、」と思い

ついたのがキッカケで、コロリ変わってしまうこともある。  JCOのように。

 

*   *

 

そこで、かつてパスした「神性」(第15号参照)を、私は改めて思い起こす。

 

公益的、かつ広域的、しかも万が一には致命的に甚大な影響を及ぼす企業活動を

行なう組織のトップは、やはり神を志向する姿勢でいることが、(技法以前に)

求められるのではあるまいか。   と言うのも、あのミットモ恥ずかしい

 

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●JCO幹部の土下座姿、

 

あれが世界をかけめぐって、「日本」がPRされるのですからね。身がすくむ

思いです。さぞ軽蔑されることでしょう。表面で何を言おうと、たとえ正式に

取り決めようと、裏へ回っては何をしていることやら、信用ならぬ人種だ、と。

 

しかも、むかし竹ヤリ、いまバケツ。 プリミティブかつネガティブですなあ!

これがジャパニーズ・デファクト・スタンダード、ですかね?

 

 

JISはあまりにローカル、このグローバル時代にはISO! で、猫も杓子も。

そのISOの審査員を務めている友人が何人かいますが、これからはウソ発見器

を常時携行したまえ、とでもアドバイスしようかしら。

 

いや、彼らは言うまでもなく、大多数のクライアント企業各社はJCOと違い、

真面目にプロセスを遵守しているでしょう。けれども、一度こうして地に墜ちた

「日本」の信用を取り戻すには、みんなで励んでも、今後何年かかることやら。

 

*   *

 

その意味で、JCOトップには極刑を課する必要がある、と思います。ケジメを

つける国だということを世界に発信し直さなければ、真面目にやっているほかの

日本人が永く迷惑を被るのですから、ね。また、アチコチで傾いている企業倫理

を立て直すにも、この際は一罰百戒。 オーバーなくらいであって良かろう、と。

 

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●発生したトラブルへの対応は

 

Quick and Honest が鉄則、と私が知っているくらいだから、その筋の人々が

ご存じないはずはなかろうに、今回も例に違わず Slow and Deceptive 。

 

まず求めた救急車出動、それに際して「病人が出た。テンカンの症状」と言った

そうな。そのため、現場に駆けつけた消防士3人が被曝している。これは(その

意図の有無に関わりなく)重大な欺瞞です。警報音が何を意味するのか、彼らは

知っていたのだから。  公益性事業の成員にして、この驚くべき反社会性。

 

 

このウソの原因を「社員教育の不足」としている新聞もある。冗談言いなさんな。

3人同時にテンカンを起こすなんてこと、常識では考えられませんよ。それとも、

JCOでは常識なのかな?  そういう「教育」は「不足」していなかった?

 

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●ケプナーとトレゴーの共著

 

「新・管理者の判断力」には、「潜在的問題分析」が、

 1.現在進行中のプロジェクト、業務、、、等々の危険な領域の確認

 2.その危険な領域の、、、、「潜在的問題の確認」

 3.そうした潜在的問題を引き起こしそうな「可能性の高い原因の確認」と

   「予防対策の確認」

 4.その予防対策が、、、失敗した場合にとり得る「緊急時用対策の確認」

という基本的な4ステップで説明されています。

 

 

1.は、たとえば「どの辺に危険が集中しているのか?」という質問に置き換え

ることが出来ますが、原発業界では「危険」を想定したり論じること自体が禁じ

られているらしい。  尋ねても、多分、答えてはくれないでしょう。

 

  防衛庁や自衛隊が「有事」を想定して作戦研究しただけでも、何か憲法違反

  のように騒ぐ我が国のマスコミです。原発業界が「危険」を想定しないのも、

  騒がれたくない一心、の故でしょうかね? 

 

  しかし自衛隊も原発企業もその道のプロなのだから、何か言われてビクビク

  するのはオカシイ。 我々がやらなかったら、いったい誰が?、 さらに、

  やらずにいたらどうなるのか? と、臆せずに反論すべきだろうに。

 

2.は同じく、「そこにはどんなトラブルがあり得るのか?」となるわけでしょう

が、「放射能漏れ事故は絶対に起こらない、というのが前提」では、これもまた、

訊くだけ野暮、というやつでしょう。  「そんなもの、ありません」かな?  

 

1.、2.を省いていきなり3.、4.としていけないわけではない。それでも、

しないよりはマシな場合もあり得ます。しかしそれは、いわば技法抜きの自己流

思考。議論の要点を絞らないのだから効率は悪いし、偏りやヌケ・モレが生じ、

きわめて不完全な判断を下す危険が増す、、、 不要な、あるいは誤った対策に

熱を入れたりしていたら、トータルの危険度は、かえって増すことになるかも。

 

*   *

 

EM法では、さらに細かくステップを刻んで進めますが、相手の姿勢がこれほど

拒絶的な場合、うまく機能し得ないことは同様。つまりJCOに、技法の出番は

ありません。  問題が「無い」のですから、解決も必要ない、、、でしょう。 

 

A danger foreseen is half-avoided.  (予見できれば、半ば回避成功)

 

と言います。しかしこの業界、見たがらないから、見えない。 見えないものは、

避けようがありません。 つまりあの事故は、起きるべくして起きたと言えます。

「心配り」は、まず見えないものを見えるようにするところから、なのです。

 

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●ケプナーとトレゴーの

 

Rational Process は、問題解決に立ち向かう人の考え方を、大別4種類の

パターンに分けて体系づけたものです。

 

その一つが「潜在的問題分析」で、基本的に「これで行こう」と決まったことを

実施する(させられる)立場の人、自分の意志と関わりなく業務目標の円滑達成

を強いられる人、たとえば「部門の責任者」には、まあ必修科目です。

 

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お断わりしてあるように、これは技法の体系的解説を行なうメルマガではありま

せん。が、たまたまJCO事件で乗りかかった舟、次回も漕ぎ続けることになる

でしょう。

                              ■竹島元一■

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